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イッセイエッセイ

1277号 汎用語(英語と日本語)

2017年11月12日(日)

 英語の〈wear〉という単語は、対応する日本語との関係で使い方がすこぶる広く有用きわまりない英単語である。
 身の回りに付けるものは、着る(服)、履く(ズボン、靴)、かぶる(帽子)、かける(眼鏡)、しめる(ベルト)、つける(宝石)、はめる(指輪)、はやす(ひげ、髪)、する(シートベルト)、浮べる(微笑)など、すべて〈wear〉で済ませるのであり、日本語に応じてあれこれ無駄な努力をする必要がない。これをそれぞれの場合について日本語でどう表現するのだろうと試みるだけで難儀をするだろう。〈wear〉は使い方を知っているだけで、まったく便利で汎用度の高い動詞なのである。
 これを逆にして、日本語を学ぶ英語ネイティブ・スピーカーにとって日本語の単語一語で済ませるような使い途の広い便利な動詞があるのだろうか。〈do〉と〈する〉はともに本来的な汎用語だから除かなければならないだろう。
 これは「和英辞典」の中の見出し語の動詞で英語訳の多い単語を見つけるのが早道であろう。とりあえず辞書の初めの部分にあるあ行にある〈いう〉の使い方を引いてみよう。
 say ("yes"), speak (a word), talk (nonsense), tell (jokes), mean (it), give(one opinion) etcが、日本語で〈いう〉と表現できる。
 しかし、この〈いう〉の意味が〈wear〉のようには目的語のとり方が幅広くなく、要するに話すことでしかないので、典型的な汎用性は示していないと見える。しかし一方で、〈wear〉についても身につけるという語感から見ればすべて宝石も靴下も同じようなものであり共通であるという理解も成り立つ。
 要すれば〈wear〉が何にでも使える語であると日本人が勝手に感心するのは、〈wear〉の本来の使い方を知らなかっただけの話だ、という事かもしれないのである。

(2017.11.6 記)